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池上彰×佐藤優のアホくさい左翼論を批判する

池上彰、佐藤優両氏が戦後の左翼の盛衰の歴史について対談した。新左翼はブント、第四インター、中核派。革マル派、全共闘、新左翼運動、学園闘争、赤軍派、イジャック事件、よど号事件などマスコミを賑わした。
佐藤氏は
私は日本の近現代史を「左派の視点」から捉え直す作業を池上さんとやってみたいと考えています。私は「左翼の時代」がまもなく再び到来し、その際には「左派から見た歴史観」が激動の時代を生き抜くための道標の役割を果たすはずだと考えているからです。


佐藤氏は左翼の時代が「再び」到来すると述べている。再びと言うことは過去に左翼の時代が到来したことがあったということである。佐藤氏のいうような左翼の時代はなかった。左翼はマスコミを賑わしただけである。
左翼が目指しているのは社会主義国家である。日本で左翼の時代があったということは社会主義国家になった時代があったということになる。戦後の日本はずっと議会制民主主義国家であった。一度も社会主義国家になったことはない。左翼が政権を握ったこともない。左翼の時代は一度もなかったということだ。
佐藤氏はベトナム反戦運動・第二次反安保闘争や授業料値上げ反対・学園民主化などの学生運動が活発になったことを左翼の時代と呼んでいる。それは左翼の時代ではない。学生運動の時代である。
学生運動はマスコミをにぎわした。1968年に東大の安田講堂を学生が占拠し、機動隊との激しい闘いの様子がテレビ生中継された。強固なバリケードと、上部階からの火炎瓶やホームベース大の敷石の投石、ガソリンや硫酸といった劇物の散布など、学生は予想以上の抵抗をした。エリートである東大生の暴力行為に国民は驚いた。マスコミは全学スト、バリケードなどをやる学生運動を報道した。しかし、学生運動は大学内の運動であり社会に拡大することはなかった。マスコミの世界では左翼学生の運動が賑わしたが、現実社会では無風だった。


日本の左翼は共産党だけであった。共産党内で内部抗争があり、共産党を離脱したグループが左翼団体を立ち上げた。新たな左翼が学生に浸透して全共闘を結成した。だから、共産党系の民青と全共闘は同じ左翼である。同じ左翼でありながら敵対していた。
学生運動は全共闘と民青が対立していた。勢力は五分五分であった。全学バリケード封鎖に向けて全共闘系は東京に7千名が結集した。一方バリケードを阻止する日共(民青)系も7千名が全国から結集した。全共闘と民青はにらみあって両者の衝突はさけられないと思われていたが、寸前で両者の衝突は避けられた。



ユーチューブ 全共闘 東大安田講堂事件 – 1969


これを見れば全共闘の運動が革命とは無縁であることが分かる。全共闘は左翼イデオロギーがあったとしても革命を目指した運動はしなかった。だから。佐藤氏の「左翼の時代」は間違っている。左翼の時代はなかったというのが正しい歴史館である。


 スリランカで政権批判を強める市民らが、ラジャパクサ大統領の公邸を占拠した。大統領は国大脱出した。しかし、スリランカの市民の戦いは革命ではない。大統領は追放したが国家体制はそのまま守ったからだ。


ユーチューブ 経済危機のスリランカ 大統領が辞任表明も混乱続く



全共闘 東大安田講堂事件 – 1969
スリランカの政権批判勢力が共産党系の左翼であったら革命を宣言し共産党一党独裁の社会主義国家を設立していただろう。しかし、スリランカに共産党のような左翼は存在しない。スリランカは新しい国家を設立するのではなく新しい大統領を選挙のルールで選んだ。ゴーターバヤ・ラジャパクシャ前大統領の後継者として、3人の候補者が指名された。スリランカ国会で国会議員による無記名投票が行われ、ラニル・ウィクラマシンハ首相が新大統領に選出された。ウィクラマシンハ氏は議会で「分断は今終わる」と述べ、首相候補だったアラハペルマ氏に対し「われわれが直面する危機からこの国が抜け出せるよう、共に力を合わせよう」と呼び掛けた。
暴力で大統領官邸を占拠して暴力で大統領を国外追放したスリランカ国民であるが、新しい大統領は国会議員の選挙で選ぶことを支持した。スリランカの議会制民主主義を国民は守ったのである。


池上彰・佐藤優のいう新左翼は共産党から離脱した左翼が結成した集団であり彼らのイデオロギーは全共闘に引き継がれた。安田講堂やバリケード紛争など全共闘は派手な運動をしたからマスコミをにぎわせた。だから、学生運動=全共闘と思われているが、学生運動では民青の方が勢力はあった。民青は全共闘のような暴力ではなく平和的な運動を展開していた。民青の運動がマスコミの対象となることはなかったが民青の勢力は全共闘と互角かそれ以上だった。全共闘だけを学生運動として考えている池上、佐藤両氏は間違っている。
共産党・民青と新左翼・全共闘は対立していた、対立の原因は革命論だった。革命論の違いから対立していたが、共産党も新左翼も日本の体制を革命で変革する考えは同じだった。
左翼で一番勢力があったのは共産党である。共産党に比べれば新左翼の勢力は小さかった。新左翼が共産党に代わって新たな勢力になったことはなかった。新左翼は派手な運動でマスコミを賑わしただけである。
 池上彰、佐藤優両氏はマスコミを賑わした全共闘などの左翼が社会ではとても小さな存在であり、議会制民主主義への影響はほとんどなかったことを認識していない。


 左翼の基本的な考えである。
〇米国はブルジョア階級が支配する帝国主義国家である。〇日米安保条約は日本を米国に隷属させる。
〇自民党は労働者を搾取するブルジョアジーの味方。
〇社会主義国家は労働者を搾取するブルジョアジーを排除し、労働者を解放し、自由で平等な社会にする。
〇選挙で議員を選ぶとブルジョアジーや右翼が選出される可能性がある。選挙制度を廃止し、共産党一党独裁国家にする。


日本を革命で社会主義国家にすることが共産党から新左翼に共通する考えである。このことを無視して日本の左翼について述べることはできない。日本の左翼は革命を目指している。左翼の革命は議会制民主主義を破壊することである。このことを池上・佐藤両氏は認識していない。だから、左翼について正しい説明はしていない。
両者がいま左翼史について語る理由は
自殺者が11年ぶりに増加に転じた。アメリカ型の民主主義は、極端に大衆扇動型の指導者を誕生させた。社会の矛盾を是正するどころか、今や制度自体が社会に分断を生む元凶なのではないかという疑念。格差の是正、貧困の解消といった問題は、左翼が掲げてきた論点であるからだという。
両氏が取り上げている問題は両氏の主観の入った政治問題であり議会制民主主義内で解決できる問題である。社会主義革命で解決しなければならない問題は一つもない。左翼とは関係がない問題である。池上・佐藤両氏は全共闘などの左翼運動とは関係のない問題を取り上げて左翼の再到来を論じている。アホらしい。


1991年にソ連は崩壊した。東欧の社会主義国の多くは民主主義国家になった。歴史は社会主義国から民主主義国に変革することを教えた。全共闘時代のように社会主義を夢見ることはできなくなった。
今年、ロシアがウクライナに侵攻した。武力で支配するロシアの正体を知れば左翼に参加する若者はいなくなる。ソ連崩壊、ロシアのウクライナ侵攻によって左翼は衰退するだけである。池上、佐藤氏の期待する左翼の再到来は絶対にない。